For Engineers

フリーランスの商流確認|面談で聞く10の質問

公開

Authorこの記事を書いた人

株式会社Riize Advisors 代表取締役 細倉 尚将

株式会社Riize Advisors 代表取締役

細倉 尚将

外資系コンサルティングファームにてM&A戦略・新規事業立案等に従事した後、株式会社Riize Advisorsを創業。コンサルタントとエンジニアのチームで、AI・システム開発を構想から実装・運用まで支援している。

Share

商流の浅い案件かどうかは、案件票の書き方、面談に出てくる人、質問への答え方、契約の相手の4つでおおむね見分けられます。エンドから何社目の案件なのかは、面談で聞いてかまいません。この記事では、商流の仕組みと深いときに起きやすいこと、見分けるサイン、面談でそのまま使える10の質問、契約前に確かめておきたい項目をお伝えします。

商流とは:案件があなたに届くまでの会社の連なり

商流は、システム開発やコンサルティングの仕事が、発注元からあなたに届くまでに経由する会社の連なりを指します。IT業界では、おおむね次のような形をとります。

立場主な役割
エンド(発注元の企業)システムやプロジェクトの発注者です。事業会社や官公庁などが当たります
元請け(一次請け)エンドと直接契約し、プロジェクト全体を受け持つ会社です
二次請け・三次請け元請けから仕事の一部を受け、さらに人やチームを手配する会社です
フリーランスいずれかの会社と契約し、実際に業務を担います

エンドと直接、またはエンドとの間に1社だけが入る形を「商流が浅い」、間に何社も入る形を「商流が深い」と呼ぶことが多いです。エンドと直接契約する案件は「エンド直」と呼ばれます。SESの案件でも業務委託の案件でも、この考え方は変わりません。

商流が深いと起きやすいこと

商流が深いこと自体が悪いわけではありませんが、間に入る会社が増えるほど、次のようなことが起きやすくなります。

  • 情報が届きにくくなります。 プロジェクトの目的や背景、エンドが本当に困っていることが、伝言を重ねるうちに薄まります。案件票に「Java開発」としか書かれていない、といった形で表れます。
  • 指示が遠くなります。 仕様の確認や優先順位の判断を、何社も経由して待つことになります。現場で決められないことが増え、手戻りの原因にもなります。
  • 条件が変わりやすくなります。 上流の会社の契約が変わると、その影響が順に下へ伝わります。期間の短縮や役割の変更を、理由を知らされないまま受け取ることもあります。
  • 相談先が分かりにくくなります。 困ったときに誰に話せばよいのか、誰が決める権限を持っているのかが見えにくくなります。

商流の浅い案件を見分けるサイン

商流は、聞けば必ず正確に教えてもらえるものではありません。そのため、質問への答えだけでなく、やり取りの中に出てくるサインを合わせて見ることが大切です。

案件票の書き方

商流が浅い案件ほど、案件票にエンドの事情が具体的に書かれている傾向があります。次の点を見てみてください。

  • 業界やサービスの内容、プロジェクトの目的が書かれているか
  • 「なぜ今この人が必要なのか」(新規立ち上げ、リプレイス、体制の増強など)が分かるか
  • 求めるスキルが、技術名の羅列ではなく、担う役割と結びついて書かれているか
  • 同じ案件が、複数の紹介会社から似た文面で届いていないか

同じ案件が別々の会社から届く場合は、その案件が何社かを経由して広く流れている可能性があります。

面談の参加者

面談に誰が出てくるかは、分かりやすいサインの一つです。エンドの担当者やプロジェクトの責任者が参加していれば、商流は比較的浅いと考えられます。反対に、参加者が紹介会社の担当者だけで、エンドの人と話す機会が無いまま参画が決まる場合は、間に何社か入っている可能性があります。

面談で相手の所属を確かめるときは、「本日ご参加の皆さまのご所属を伺ってもよいですか」と聞けば、角が立ちにくくなります。

質問への回答の速さと具体性

業務内容やチーム体制について質問したとき、その場で具体的に答えが返ってくるかどうかも目安になります。「確認して後ほどお伝えします」が続く場合、答えを知っている人がその場にいない、つまり情報の出どころが遠い可能性があります。

もちろん、細かい数字や社内の事情は、商流が浅くてもすぐには答えられないことがあります。一つの質問ではなく、全体の傾向で判断するのがよいでしょう。

契約の相手

最終的に確かめたいのは、あなたが契約を結ぶ相手と、その会社がエンドから何社目にあたるかです。契約書の当事者は、紹介してくれた会社とは別の会社になっていることもあります。契約書の案が届いたら、当事者の欄を必ず見てください。

面談で確認する質問の例

商流をたずねるときは、条件を値踏みする聞き方より、「仕事を進めるうえで知っておきたい」という聞き方のほうが、相手も答えやすくなります。次の10の質問を、案件に合わせて使ってみてください。

質問確かめたいこと
1. このプロジェクトの発注元は、どちらの業界の企業ですかエンドの存在と、案件の背景が分かっているかを確かめます
2. 御社は発注元と直接ご契約されていますか紹介元の会社の位置を確かめます
3. 私の契約の相手は、どちらの会社になりますか紹介元と契約の相手が同じかを確かめます
4. 日々の作業の指示や相談は、どなたにすることになりますか指示の経路の長さを確かめます
5. 仕様や優先順位は、どなたが最終的に決めていますか判断する人との距離を確かめます
6. チームはどの会社の方で構成されていますか現場に何社が入っているかを確かめます
7. このポジションが必要になった背景を教えていただけますか情報がエンドから届いているかを確かめます
8. 参画後、困ったことがあればどなたに相談できますか相談先がはっきりしているかを確かめます
9. 契約期間と更新の判断は、いつ頃どのように行われますか条件の変わりやすさを確かめます
10. 本日の面談の後、参画の可否はどなたが決めますか決める権限がどこにあるかを確かめます

全部を一度に聞く必要はありません。紹介会社との事前の面談で2・3・6を、クライアントとの面談で4・5・7を聞く、というように分けると自然です。答えにくそうな様子があっても、それだけで判断せず、他のサインと合わせて考えてください。

契約前に確認すること

商流の深さに関わらず、契約の前には条件を書面で確かめておくことが大切です。次の項目を、契約書や条件の通知で一つずつ見てください。

項目見るところ
契約の相手契約書の当事者が、面談で聞いた会社と一致しているかを見ます
契約の形態準委任・請負など、どの形の契約かを見ます
業務の内容面談で聞いた役割と、契約書に書かれた業務が合っているかを見ます
報酬と支払期日報酬の額と、いつ支払われるか(支払サイト)を見ます
精算の方法稼働時間の幅(精算幅)と、幅を超えたとき・下回ったときの扱いを見ます
契約期間と更新期間、更新の判断の時期、途中で終了するときの扱いを見ます
作業の場所と働き方リモートか常駐か、稼働日数や時間帯の取り決めを見ます

フリーランス法で示されている取引条件の明示

2024年11月1日には、フリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されています。厚生労働省が掲載している公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の説明資料では、施行日とともに、報酬の支払期日の決め方などが説明されています。

公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでは、発注事業者がフリーランスに業務を委託したときは、直ちに書面または電磁的方法で取引条件を明示すること、口頭での伝達は認められないことなどが説明されています。また、2024年版の特設サイトでは、明示する事項として、給付の内容、報酬の額、支払期日、委託する事業者とフリーランスの名称など9つが挙げられています。

条件の通知を受け取ったら、上の表の項目と照らし合わせておくと安心です。どの規定が自分の取引に当てはまるかは、契約の内容や働き方によって変わります。具体的な判断が必要なときは、特設サイトで案内されている相談窓口(フリーランス・トラブル110番など)や、弁護士などの専門家に相談してください。

契約の形と働き方が合っているか

もう一つ確かめておきたいのが、契約の形と実際の働き方が合っているかどうかです。厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」では、派遣か請負かは契約の形式ではなく実態に基づいて判断されると説明されています。

商流が深い案件では、誰がどの立場で指示を出すのかが分かりにくくなることがあります。面談で聞いた指示の経路と、契約書の形が食い違っていないかを見ておき、気になる点があれば契約の前に確認してください。個別の判断は、ガイドや労働局などの公的な窓口、専門家に確かめるのが確実です。

商流だけで案件を選ばない

ここまで商流の見分け方をお伝えしてきましたが、商流が浅いことは、良い案件の条件の一つにすぎません。エンド直でも役割があいまいな案件はありますし、間に1社入っていても、その会社が現場の調整を担ってくれることで働きやすくなる場合もあります。

案件を比べるときは、商流と合わせて次の点も見てください。

  • 案件の中身:何を作るのか、どんな課題を解くのかが、あなたの関心と合っているか
  • あなたの役割:実装を担うのか、設計や要件定義から関わるのか、チームをまとめるのか
  • 学べること:次の案件につながる技術や経験が得られるか
  • 働き方:稼働日数、リモートの可否、チームとの関わり方が希望に合うか

分野によっても、見るべき点は変わります。生成AIに関わる案件を探している方はフリーランス向けの生成AI案件を、要件定義やPMOなど上流の役割を目指す方は上流工程・PMO案件の考え方も参考にしてください。

Riizeでは、ご紹介する案件について、担当者が事前面談でスキルとご希望を伺ったうえで、条件の合う案件だけをお伝えしています。参画後も、稼働状況の確認や現場との調整に担当者が伴走しますので、商流や契約について気になることがあれば、面談の場で遠慮なくお聞きください。

まとめ

  • 商流は、エンドからあなたに案件が届くまでに経由する会社の連なりです。深くなるほど、情報が届きにくく、指示が遠く、条件が変わりやすくなります。
  • 商流の浅さは、案件票の具体性、面談の参加者、質問への回答の速さと具体性、契約の相手から見分けられます。
  • 面談では「仕事を進めるうえで知っておきたい」という聞き方で、契約の相手・指示の経路・決める人をたずねると答えてもらいやすくなります。
  • 契約前には、契約の相手と形態、業務の内容、報酬と支払期日、精算の方法、期間と更新を書面で確かめます。フリーランス法の特設サイトでは、取引条件の明示について説明されています。
  • 商流だけでなく、案件の中身・役割・学べることを合わせて選ぶことが、納得できる参画につながります。

Share

Related