Column業務・基幹システム
Studioからの移行判断|7つのサインと進め方
Authorこの記事を書いた人

株式会社Riize Advisors 代表取締役
細倉 尚将
外資系コンサルティングファームにてM&A戦略・新規事業立案等に従事した後、株式会社Riize Advisorsを創業。コンサルタントとエンジニアのチームで、AI・システム開発を構想から実装・運用まで支援している。
Studioなどのノーコードで作ったコーポレートサイトを作り直すべきかは、見た目の古さではなく、「サイトに業務とつながる役割を持たせたいか」で決まります。会社案内と情報発信が中心なら、今のサービスのまま整えるほうが合っていることも多くあります。この記事では、作り直しを考える7つのサインと、すぐに作り直さなくてよい場合、ノーコードのまま整理する・一部だけ外部の仕組みとつなぐ・作り直す、の3つの選択肢の選び方、作り直すときの進め方(URLの棚卸しとリダイレクトを含む)をお伝えします。
ノーコードで作ったサイトの良さ
ノーコードのサイト作成サービスの強みは、短い期間で、デザインにこだわったサイトを、社内の担当者が自分で更新できる形で公開できることです。Studio 公式サイトは、自社を「ノーコードWeb制作プラットフォーム」と説明し、デザインもCMSもノーコードで作れること、サーバーの準備や保守が要らないこと、デザインの知識がない担当者でもページを更新・追加しやすいことを挙げています。
コーポレートサイトの役割が「会社のことを正しく伝える」「お知らせや採用情報を早く出す」であれば、これはとても合理的な選び方です。制作会社に頼まなくても文言を直せる、キャンペーンのページをすぐに足せる、という身軽さは、作り直したあとも残したい価値です。
そのうえで、サイトに求める役割が増えてくると、考える点が変わります。会員の登録、製品の検索、注文や見積もりの受付、問い合わせの振り分け、AIを使った提案など、サイトの外にある業務とつながる機能が必要になると、「ページを作って公開する道具」に加えて、「データを持ち、処理をする仕組み」が要るからです。ここで言う限界は、サービスの欠点ではなく、サイトに持たせたい役割と道具の得意分野とのずれのことです。ノーコードツールの限界を役割のずれとして捉える考え方は、kintoneの運用が限界に来ているかを見分けるサインでも同じです。
作り直しを考える7つのサイン
次の7つは、どれか1つに当てはまったらすぐ作り直す、というものではありません。「この機能が必要になったら、作り直しを含めて考える」という目安です。
| サイン | よくある状態 | 必要になったときに考えること |
|---|---|---|
| 1. サイトの外の業務と二重入力になっています | 問い合わせや申込の内容を、担当者が基幹システムや顧客管理に打ち直しています | 受け付けたデータを、そのまま社内の仕組みに渡せるかを考えます |
| 2. 会員・注文・資料請求がメールやスプレッドシートで回っています | 申請の受付、承認、資料の送付を、メールの往復と表計算で管理しています | 申請から承認・送付までを、サイトの機能として持つかを考えます |
| 3. 製品や事例の検索・絞り込みが必要です | 製品数が増え、用途・業種・仕様などで探したいという要望が出ています | 製品のデータをどこで持ち、どう検索させるかを考えます |
| 4. サイトが複数に分かれています | コーポレートサイト、製品カタログ、注文や会員のサイトが別々に作られています | 1つにまとめるか、役割を分けたままつなぐかを考えます |
| 5. AIを使った機能を入れたいです | おすすめの提示、書類の自動確認、問い合わせの一次回答などを検討しています | AIに渡すデータと、結果を確認する人の手順を考えます |
| 6. データの持ち方や書き出しを決めたいです | 製品情報や会員情報を、自社で管理・移行できる形で持ちたいと考えています | データの置き場所と、別の仕組みへ移すときの手順を考えます |
| 7. 表示速度やSEOを細かく調整したいです | ページの構造や配信の設定まで、自社の方針で決めたいと考えています | どこまで自社で手を入れたいかを考えます |
サインを読むときのポイント
1と2は、サイトそのものより、サイトの裏で人が手で回している業務の量で判断します。月に数件の問い合わせなら、メール通知と手作業で十分なことも多くあります。件数が増え、担当者が転記や確認に追われているなら、業務の側から見直す時期です。表計算での管理が回らなくなるサインは、Excel管理の限界サインとシステム化の判断も参考になります。
3と5は、サイトに「データ」が必要になるサインです。製品を条件で探す、会員の情報に応じておすすめを出す、といった機能は、整理された製品データや会員データがあって初めて作れます。
6と7は、ほかのサインと一緒に出てきたときに重く見ます。たとえばStudio ヘルプの自社サーバーでの公開についての回答のとおり、Studioで作ったサイトはStudioのサーバー上で公開する仕組みです。サーバーの準備や保守を任せられる良さと表裏の関係なので、自社でサーバーを持たない会社にとっては、これ自体は困ることではありません。会員や注文のデータを自社の仕組みで持ちたくなったときに、改めて考える点になります。
すぐに作り直さなくてよい場合
次のような場合は、作り直しを急ぐ必要はありません。
- サイトの役割が、会社案内・お知らせ・採用情報・問い合わせの受付に収まっています。
- 問い合わせや資料請求の件数が少なく、メール通知と手作業で無理なく回っています。
- 製品や事例の数が少なく、一覧から目で探せます。
- 社内の担当者が自分で更新できていて、困りごとが「デザインを少し変えたい」程度です。
- 作り直したい理由が「古く見える」だけで、増やしたい機能がまだ決まっていません。
最後の場合は、作り直す前に「サイトで何を増やしたいか」を言葉にするところから始めるのが近道です。増やしたい機能が見えないまま作り直すと、見た目は新しくなっても、裏の業務は変わらないことがあります。
3つの選択肢と向き不向き
作り直しの検討は、「全部作り直すか、何もしないか」の二択ではありません。
| 選択肢 | 向いている場合 | 気を付けること |
|---|---|---|
| ノーコードのまま整理します | 困りごとがページ構成・導線・更新の手順にあります | 業務とつなぐ機能は増えないので、サインの1〜5は残ります |
| 一部だけ外部の仕組みとつなぎます | サイトは今のままで、フォームの後ろや一部の機能だけを強めたいです | つなぎ目が増えるので、設定や担当者が分かる状態にしておきます |
| 作り直します | 会員・注文・検索・AIなど、データを持つ機能が中心になります | 要件定義とURLの移転の計画に時間をかけます |
ノーコードのまま整理する
ページ構成を見直し、古いページを片付け、問い合わせまでの導線を短くするだけで、目的が果たせることがあります。CMSの項目を整え、誰がどのページを更新するかを決め直すのも、この選択肢に入ります。
一部だけ外部の仕組みとつなぐ
ノーコードのサイト作成サービスの多くは、外部の仕組みとつなぐ機能を備えています。Studioの場合、Studio ヘルプの「Data Connect API(API連携)」によると、Businessプラン以上で、REST APIを公開している外部サービスからデータを取得して、動的リストや動的ページに表示できます。同じページには、この機能は外部サービスからデータを取得するためのもので、外部のデータを作成・更新・削除することはできない、とも書かれています。外部で管理している製品データをサイトに表示する、といった使い方に向いています。
フォームの回答は、Studio ヘルプの「フォーム回答管理:外部APIに連携する」で、Googleスプレッドシートに連携し、Google Apps Scriptから外部のAPIへ送る方法が紹介されています。またStudio ヘルプの「Studioサイトのサブディレクトリで、別サーバーにあるサイトを公開する」によると、Business Plus以上のプランでカスタムプロキシのアドオンを契約すると、Studioサイトの一部のパスで、別のサーバーにあるサイトを表示できます。
こうした機能を使えば、コーポレートサイトはStudioのまま、会員や注文の部分だけを別の仕組みで作る、という分け方もできます。プランや機能の条件は変わることがあるため、検討するときは公式ヘルプで最新の内容を確かめてください。
作り直す
会員・注文・検索・AIの機能がサイトの中心になり、つなぎ目のほうが多くなりそうなら、作り直しが選択肢になります。作り直すといっても、社内で更新できる良さを手放す必要はありません。お知らせや製品ページはCMSで社内の担当者が更新し、会員や注文などの機能は開発して作る、という形にできます。
作り直すときの進め方
1. 要件定義:現状のページ・コンテンツ・URLを棚卸しする
最初に、今のサイトにあるページ、コンテンツ(文章・画像・PDF・製品情報)、URLを一覧にします。あわせて、サイトの裏で回っている業務(問い合わせの対応、資料の送付、会員の承認など)を、誰が・どの頻度で・何を使って行っているかを書き出します。増やしたい機能は、この業務の一覧から決めると、作ったあとに使われる機能になります。
制作会社や開発会社に依頼するときは、この棚卸しをもとに、解きたい課題と選ぶ基準を文書にしておくと、提案を比べやすくなります。書き方は中小企業向けのRFPの書き方で説明しています。
2. URLを変えるなら、旧URLと新URLの対応表を作る
作り直しでURLの形が変わる場合は、旧URLと新URLを1対1で対応させた表を作ります。Google 検索セントラルの「URL の変更を伴うサイト移転」は、旧URLから新URLへ、301などの永続的なサーバーサイドのリダイレクトを設定すること、関係の薄いページ(トップページなど)へまとめて転送しないこと、リダイレクトはできるだけ長く(一般的には1年以上)残すことを勧めています。
同じページでは、Search Consoleで新旧のサイトの所有権を確認しておくこと、ドメインを変える場合はアドレス変更を送ること、新しいURLのサイトマップを送ること、サイト内のリンクを新しいURLに置き換えることも挙げられています。検索順位は移転の直後に一時的に変動することがある、とも書かれているので、公開後しばらくは表示回数と流入を見守ります。
3. CMSで社内の担当者が更新できる形にする
お知らせ、製品、事例、採用情報など、更新の多いページは、作り直したあとも社内で更新できるようにCMSで作ります。誰が何を更新するかを先に決め、入力の項目もその人が迷わない形にします。ノーコードで更新してきた担当者の使い勝手を、要件として残しておくことが大切です。
4. 機能は段階的に足す
最初からすべての機能を作り込まず、まずサイトの統合と、業務の負担が大きい機能(たとえば会員の申請と承認)から始めます。検索の条件やAIの機能は、公開後の使われ方を見てから広げるほうが、使われない機能を作らずに済みます。
5. 公開とドメインの切り替え
新しいサイトを検証用の環境で確認し、リダイレクトの対応表どおりに転送されるかを確かめてから、ドメインの向き先を切り替えます。問い合わせや会員申請のフォームは、切り替えの当日に実際に送信して、通知と保存先まで確認します。切り替えのあと、今のサービスの契約をいつ止めるかも、あらかじめ決めておきます。
実例:サイトを作り直して業務とつないだ例
Riizeでは、老舗メーカーのサイト刷新と、会員基盤・AI機能の構築を、PM1名・エンジニア1名の体制で約3ヶ月かけて行いました。マーケティング用のサイト、見るだけのWebカタログ、別ドメインの注文サイトの3つのサイトと会員管理を1つに統合し、用途・シーン・色で製品を探せる検索、会員申請から承認までのWeb化と資格書類のAI-OCRによる自動確認、おすすめの提示とAIによる完成イメージの生成を加え、CMSで即日更新できる形にしています。
このお客様のサイトはノーコードのサービスで作られていたわけではありませんが、サインの2〜5(会員の申請、製品の検索、複数のサイト、AIの機能)が重なったときに、サイトを作り直して業務とつないだ例として参考になります。そのほかの事例はRiizeの実績一覧でご覧いただけます。
費用と発注の考え方
費用は、統合するサイトの数、移すコンテンツの量、会員や注文などの機能の範囲、外部の仕組みとの連携の数によって大きく変わります。ノーコードのまま整理する、一部だけつなぐ、作り直す、の3つは、費用だけでなく、公開までの期間と、公開後に社内で担う作業の量も違います。
見積もりを受け取ったら、金額の大小より、何が範囲に入っていて何が入っていないか(コンテンツの移行、リダイレクトの設定、公開後の保守など)を確かめます。確かめ方はシステム開発の見積もりの妥当性の見方にまとめています。
まとめ:作り直すかは「サイトに業務を持たせるか」で決める
- ノーコードのサイト作成サービスは、早く作れて、デザインの自由度が高く、社内で更新できる良さがあります。
- 作り直しを考えるのは、二重入力、メールと表計算で回る申請、検索、複数のサイト、AIの機能、データの持ち方、細かい調整が必要になったときです。
- 必要な機能が限られていれば、ノーコードのまま整理するか、一部だけ外部の仕組みとつなぐ方法があります。
- 作り直すときは、ページ・コンテンツ・URLと裏の業務を棚卸しし、301リダイレクトの対応表を作り、CMSで社内更新を残し、機能は段階的に足します。
サイトの作り直しと、会員・注文・検索・AIの機能を業務とつなぐ開発は、Riizeのシステム開発でご相談いただけます。今のサイトを残すか作り直すかの整理からでも、お気軽にお声がけください。
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